商標登録までの期間は、三つの区間に分かれる

商標登録にかかる期間は、「〇ヶ月」とひとつの数字では表せません。完了するまでには、大きく分けて3つの段階があるからです。

第一の段階は、出願から審査官による最初の審査結果(登録査定または拒絶理由通知)が発送されるまでの期間です。これはファーストアクション期間と呼ばれ、特許庁の統計では、2024年の暦年平均で6.9か月、2024年度平均で6.8か月でした。この数字は年によって変動があり、2023年には平均5.8か月だった一方、2020年前後には平均10か月程度まで長期化していた時期もあります。出願件数と審査体制のバランスで動きます。

第二の段階は、登録査定を受け取ってから登録料を納付するまでの期間です。登録査定の謄本送達から30日以内の納付が原則ですので、出願人側の手続の速さで決まります。

第三の段階は、登録料の納付から設定登録までの期間です。オンライン手続で納付書に不備がなければ、設定登録は納付書の提出からおおむね3日以内に行われます。商標権が発生するのはこの設定登録の時点です。

つまり、拒絶理由が通知されず順調に進んだ場合、出願から権利の発生までは「審査待ちの期間+1か月程度」となります。一方、拒絶理由通知を受けた場合には、応答のための期間とその後の再審査が加わるため、全体で1年を超えることもあります。

ファーストアクション期間(第一の段階)は、特許庁の公表ページで確認できる

特許庁は「商標審査着手状況(審査未着手案件)」というページで、どの時期の出願にいつ頃審査着手する予定かの目安を公表しており、約2か月ごとに更新しています。出願を検討する際には、その時点の最新の着手状況を確認したうえで計画を立てることをおすすめします。当所でもご相談の際には、直近の着手状況を踏まえた見通しをお伝えしています。

早期審査という選択肢

事業のスケジュール上、7か月前後の審査待ちが許容できない場合があります。たとえば、既に使用している商標について第三者による類似商標の使用が見つかった場合や、権利化の可否を早く確定させてから事業投資を進めたい場合などです。こうした場合に検討するのが早期審査です。

商標の早期審査は、特許庁に「早期審査に関する事情説明書」を提出して申出を行い、要件を満たすと認められた出願について、審査の順番を優先的に繰り上げる制度です。基本的な条件として、出願商標を既に使用している、または使用の準備を相当程度進めていることが必要です。この使用・使用準備は日本国内におけるものに限られます。海外でのみ使用している場合は、この基本条件を満たしません。また、まだ使う予定が具体化していない「とりあえず確保しておきたい」出願は、原則として対象になりません。

対象となる類型は三つあります。

類型 条件 備考
対象1 出願商標を使用または使用準備中で、かつ権利化に緊急性がある案件 緊急性の事由には、第三者による無断使用、第三者からの警告、他人との使用許諾の関係のほか、外国出願中であることや、この出願をマドリッド協定議定書に基づく国際出願の基礎とする予定があることが含まれます。
対象2 使用または使用準備中の商品・役務のみを指定している案件
対象3 指定商品・指定役務の一部について使用または使用準備があり、かつ、すべての指定商品・指定役務が「類似商品・役務審査基準」等に掲載された表示で記載されている案件 表示に関する厳格な要件がある点に注意が必要です。審査基準等の掲載表示と少しでも異なる商品名・役務名が含まれていると対象になりません。

どの類型を選ぶかによって、指定商品・指定役務の設計方針が変わりますので注意が必要です。区分と指定商品・役務の考え方はこちらで整理しています。

また、早期審査には対象外となる出願があります。動き・ホログラム・色彩のみ・音・位置といった新しいタイプの商標、一定の立体商標、コンセント制度の適用を主張する出願、マドリッド協定議定書に基づき日本を指定する国際商標登録出願などは、現行の運用上、早期審査を利用できません。対象外の詳細な要件は改訂されることがあるため、申出の前に特許庁の公表ページで最新の内容をご確認ください。

「平均2か月」は、出願からではなく申出から

早期審査について正確に理解しておきたいのが、期間の起算点です。特許庁の公表では、早期審査の申出をした場合、申出から最初の審査結果の通知までは平均2か月程度とされています。これは「出願から2か月」ではありません。早期審査を使うと決めているなら、申出を遅らせる理由はありません。出願と同時に行うのが合理的です。

もう一つ、早期審査を使っても審査の中身は変わらない点も押さえておく必要があります。早くなるのは順番であって、基準ではありません。拒絶理由があれば早く拒絶理由通知が届くだけです。だからこそ、早期審査を使う場面では、出願前の調査と指定商品・指定役務の設計を通常以上に丁寧に行う意味があります。結果が早く出るということは、問題があった場合の対応も早く迫られるということだからです。

まとめ

商標登録にかかる期間は、通常の審査で出願から最初の審査結果の発送まで平均7か月弱、権利の発生まではさらに1か月程度が目安です。ただしこの期間は変動するため、その時点の審査着手状況を確認することが大切です。急ぐ事情がある場合には早期審査という選択肢があり、申出から平均2か月程度で最初の審査結果が得られます。起算点が「申出から」である以上、使うと決めたら出願と同時に申出をする。この一点だけでも、権利化までの見通しは大きく変わります。

自社の状況が早期審査の対象に当てはまるか、どの類型で申出をすべきか、指定商品・指定役務をどう設計すべきかは、個別の事情によって判断が分かれます。スケジュールに制約のある出願をお考えの方は、出願前の段階でご相談ください。

無料相談では、事業のスケジュールをお聞きしたうえで、早期審査の対象になりそうか、どの類型で申出をすべきかを一緒に整理します。「急いでいるが対象になるか分からない」という段階でも、入口として使っていただけます。

執筆・文責

弁理士 中村幸雄

サービス名、商品名、屋号、ロゴ、AIエージェント名など、名前とブランドに関する商標相談を扱う弁理士。 「商標の余白」では、名前を使い始める前に、商標面の不安や登録可能性、先行商標との距離感を整理するための情報を発信しています。