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この記事の結論
商標登録をしないまま名称を使うと、使用停止や名称変更を求められる可能性があり、長く使っているだけでは十分な権利になりません。
商標は、「先に使った人」ではなく「先に出願した人」が優先される
商標権は、特許庁に出願し、審査を経て登録されることで発生します。そして日本の商標制度では、同一または類似の商標について競合が生じた場合、原則として「先に使っていた人」ではなく、「先に出願した人」が優先されます。
あなたが長く使い続けてきた名前であっても、他の誰かが先に出願し、その商標が登録されれば、その人が権利者になります。使用の先後は、商標権の発生や優先順位には直結しません。「自分の方が先に使っていた結果、既に広く知られていた」という事実を、登録された権利に対して主張して争う制度もありますが、証明・手続き・費用の観点から容易ではありません。
登録した他者から、使用を止めるよう求められる可能性がある
自分が使っている名前と同一または類似の名前を、第三者が商標登録した場合、次のような請求が行われるリスクがあります。
商標法第39条が準用する特許法第103条により、商標権を侵害した側には過失があったものと推定されます。そのため、「登録されているとは知らなかった」という事実のみをもって損害賠償責任を免れることはできません。
名前を変えなければならなくなるコスト
商標権に基づいて名前の差し止めを請求された場合、その名前の使用を継続できなくなる可能性があります。その時点でブランドが育っていれば育っているほど、名称変更の負担は重くなります。
名前を変えるとは、Webサイトやドメインの変更にとどまりません。名刺、パンフレット、広告、看板、商品パッケージ、契約書のひな型、SNSアカウント。それらすべてに名前が入っていれば、すべてを変更する必要があります。これまで積み上げてきた認知も、一度リセットに近い状態になります。
特許庁の「事例から学ぶ 商標活用ガイド2024」でも、商標を取得していなかったことで生じた国内・海外のトラブルが、失敗事例として紹介されています。
名前への投資を積み上げる前に確認・登録しておくことで、このリスクを大幅に下げることができます。
「先に使っていた」という事実は、どこまで守りになるか
商標法には、先使用権(商標法第32条)という制度があります。他人の商標登録出願前から、日本国内で不正競争の目的なくその名前を使用し、その出願時点で、自分の商品・サービスを示すものとして需要者の間に広く認識されていた場合など、一定の要件を満たすと、継続してその商品・サービスについて名前を使い続けることができます。
ただし、先使用権が認められるには、「その名前が、自分の商品やサービスを示すものとして需要者の間に広く知られていること」が必要です。単に先に使い始めていたというだけでは足りず、知人や既存顧客の一部に知られていたという程度でも十分ではありません。少なくとも一地方で広く認識されている必要があります。また、このような事実を証明するための資料を準備する必要もあり、通常このような立証は容易ではありません。
さらに、先使用権は、あくまで一定の範囲で「自分が使い続けることができる」という防御的な権利です。他者の使用を止めさせたり、ブランドを積極的に独占したりするための権利ではありません。
「使い続けていれば守られる」という受け身の構えは成立しないと考えておく方が現実的です。
登録しないことを「選んでいる」のか、「後回しにしている」のか
商標登録は、すべての名前に対して必須というわけではありません。使用範囲が限定的で、競合が少なく、名前への投資も積み上げられていないのであれば、「今は登録しない」という判断が合理的なケースもあるでしょう。
商標登録を急ぐべきかどうかは、その名称が事業でどれほど重要か、変更が必要になった場合にどのような影響が出るかによって変わります。
| 状況 | 出願検討の優先度 | 判断理由 |
|---|---|---|
| 短期間だけ使い、容易に変更できる名称 | 相対的に低い | 名称への投資や変更時の影響が限定的 |
| 商品・サービスを顧客が名称で認識する | 高い | 名称がブランドの目印になっている |
| Webサイト、アプリ、包装、看板、広告へ投資する | 高い | 名称変更時の作り直しが広範囲に及ぶ |
| 複数地域、複数店舗、ライセンスなどへ展開する | 高い | 使用範囲と関係者が広がる |
| 名称変更が顧客、取引先、既存契約へ大きく影響する | 特に高い | 変更時の事業負担が大きい |
これは出願を検討する優先度の一般的な目安です。優先度が相対的に低い場合でも、他人の権利との抵触を確認する必要性とは別問題であり、先行商標の確認が不要になるわけではありません。
一方で、「そのうち登録しよう」という状態が続いているとしたら、それは判断ではなく先送りです。その間に、同じ名前を他者が商標登録してしまうリスクはあります。そのリスクを想定することなく、先送りにしているのであれば、一度確認する機会を持つことをおすすめします。
よくある質問
商標登録をしていないこと自体が、直ちに違法になるわけではありません。ただし、その名称について商標権を取得していないため、他者の使用を商標権に基づいて止めることはできません。また、他者の登録商標と抵触すれば、自分の使用が商標権侵害になる可能性があります。
先に使い始めたというだけでは、使い続けられるとは限りません。先使用権が認められるには、他人の商標登録出願前から日本国内で不正競争の目的なく使用しており、その出願時点で、自分の商品・サービスを示す名前として需要者の間に広く認識されていたことなどが必要です。使用時期や認知の広がりを示す資料をもとに確認します。
直ちに名称変更が必要になるとは限りません。登録商標と使用中の名称が類似するか、商品・サービスが同一または類似するか、先使用権などを主張できるかによって判断が変わります。ただし、使用差し止めを求められる可能性があるため、早めに権利関係を確認する必要があります。
知らなかったという事情だけで、損害賠償責任を免れられるとは限りません。商標法第39条が準用する特許法第103条により、商標権を侵害した者には過失があったものと推定されます。実際の責任や損害額は、使用状況など個別の事情によって判断されます。
すべての名称を同じ優先度で出願する必要はありません。短期間だけ使い、容易に変更できる名称は優先度が相対的に低い一方、顧客が名称で商品・サービスを認識している場合や、広告、包装、看板などへ投資する場合は、早めに出願を検討する価値が高くなります。
